Daily Archives: 2014年6月24日

” ある日、私はアメリカのケープコッドにいたが、その日は雨が降っていた。近代美術館で展示会を開いたばかりのときのことだった。
ひさしの下で雨宿りをしていたら、隣に若者たちが集まっていたので、あわててライカを手にその場を立ち去った。
若者のひとりが、こういっているのが聞こえた。
『おい!あいつ、カルティエ=ブレッソンを気どってやがる』
おもしろかったよ。
時々、私はカルティエ=ブレッソンを知っているかと聞かれるので、こう答えることにしている。
『知っていますよ!まったく性悪な男でね。とにかく、近づかないことですよ。我慢のならない男ですから』
そう、壁土色でいなければならない。自分の存在を忘れてもらう必要がある。
『私は、私は』という態度には反対だ。
ドガが、こんなふうにいっていたと思う。
『人に知られていなければ、有名であることはとてもすばらしい』 ”

Henri Cartier-Bresson フィリップ・ベグネルのインタビュー 1989年2月

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” 感情は、白黒写真のなかに見いだせる。それは、移調され、抽象化されて、「普通」ではなくなる。
現実は混沌とした洪水だから、そのような現実のなかから、われわれはバランスのとれた方法で、背景と形式を選択しなければならない。
それなのに、そのうえ色の心配までしなければならないとしたら!
また「自然の」色などなにも意味しない。骨抜きにされた光景であるカラー写真で喜ぶのは、商人と雑誌だけだ ”

Henri Cartier-Bresson 「ル・モンド紙」のインタビューより

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