いまごろちゃうどおまへの年ごろで

おまへの素質と力をもってゐるものは

町と村との一万人のなかになら

おそらく五人はあるだらう

それらのひとのどの人もまたどのひとも

五年のあひだにそれを大低無くすのだ

生活のためにけづられたり

自分でそれをなくすのだ

すべての才や力や材といふものは

ひとにとゞまるものでない

ひとさへひとにとゞまらぬ

おまへのいまのちからがにぶり

きれいな音の正しい調子とその明るさを失って

ふたたび回復できないならば

おれはおまへをもう見ない

なぜならおれは

すこしぐらゐの仕事ができて

そいつに腰をかけてるやうな

そんな多数をいちばんいやにおもふのだ

みんなが町で暮したり

一日あそんでゐるときに

おまへはひとりであの石原の草を刈る

そのさびしさでおまへは音をつくるのだ

多くの侮辱や窮乏の

それらを噛んで歌ふのだ

もしも楽器がなかったら

いゝかおまへはおれの弟子なのだ

ちからのかぎり

そらいっぱいの

光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ

– 『春と修羅 第二集』 宮沢賢治 –

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最近、中判カメラや使い捨てインスタントカメラが再びブームらしい。
理由は“インスタみたいな写真が撮れるから”
アメリカンジョークみたいな話だ。

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“団体客がいなくなって、また二人きりになると、デヴは橋を渡りきったところに立ってごらんと言った。
十メートル近く離れても、ささやき声が通るのだそうだ。
「嘘でしょう」とミランダは言った。
ここへ来てから初めて声を出した。
何だか耳の中にスピーカーをいくつも埋め込まれたようだった。
「ほら、いいから。」と、彼は反対の方向に引き返していった。ぐっと声を落として、「何か言ってみて」
その言葉が唇の上で動いたと見えたとたんに、くっきりと聞こえていた。
いや、冬のコートをとおして肌にしみるほどすぐ間近に、たっぷりと温もりを感じたので、体が火照るようだった。
「ハーイ」と、ささやいた。とっさに思いつかない。
「きみはセクシーだ」と、ささやきが返った。”

『セクシー』 / ジュンパ・ラヒリ

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“どんなときにも、なにひとつ他人に頼んだりしてはいけません!
どんなときにも、なにひとつ、とりわけ自分よりも強い相手には。
そうすれば、おのずと相手が手を差し伸べ、すべてを与えてくれることになる!
お掛けなさい、誇り高い女よ!”

『巨匠とマルガリータ』 / ミハイル・ブルガーコフ

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