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夏も終わりだな
なあ ひろこ
こうやってしょっちゅうバイクに乗ってるとな
季節が微妙に移っていくのがわかるんだよ
目で見ててもわからない季節の変化をな
匂いとか空気の肌ざわりなんかで感じるんだ
だから毎日毎日おんなじように見えてもな
本当は少しずつ少しずつ変わっていくんだよ
変わっていくんだ
ひろこ…ケーキは何がいい?

「ゴーグル」- 豊田徹也 –

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田舎の寺の住職の死というものは、異様なものである。適切すぎて、異様なのである。彼はいわば、その地方の精神的中心であり、檀家の人たちのそれぞれの生涯の後見人でもあり、彼等の死後を委託される者でもあった。その彼が寺で死んだ。それはまるで、職務をあまりにも忠実にやってのけたという感銘を与え、死に方を教えて廻っていた者が、自ら実演してみせてあやまって死んだような、一種の過失と謂った感を与える。

「金閣寺」 – 三島由紀夫 –

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もう何年も前のことなので番組名は覚えてないが五嶋龍というバイオリニストのドキュメンタリーを見ていた。
五嶋龍というのは天才バイオリニスト五嶋みどりの(おそらく)七光り息子だ。

その番組のインタビューの中で彼が「生きて生きて、もうこれ以上生きられないというところまで生きてみたい」と言ったことに甚く感動し、時々思い出しては内省している。そしてここ数週間は毎日のように考えていた。

ちなみに彼はそのインタビューの前後で、「ゆくゆくは自分の国を持ちたいし、宇宙にだって行ってみたい。やりたいこと全部やろうと思ったら人生100年じゃとても足りないですね。400年は生きなきゃ(笑)」というようなことを言っていたので、彼の言う「生きて生きて」というのは単に時間軸のことを言ったのかもしれない。

とはいえ、彼の意図がなんであろうとこちらとしては感動したもん勝ちであり、当時の自分は「生きて生きて」の部分を濃度や情熱のことだと思って感動したのである。
「生きて生きて、もうこれ以上生きられない」そんなふうに思えるほど一生懸命生きてみたいし、それはどういう生き方だろうと未だに考え続けてる。

そんな折に読んだアガサクリスティーの「春にして君を離れ」のギルビー校長の言葉は痛いほど刺さった。
「人生は真剣に生きるためにあるので、いい加減なごまかしでお茶を濁してはいけないのです」

自分はもう長いことずっとお茶を濁してばかりだ。
人より少しばかり出来の良い頭を使い、人より少しばかり良い給料を稼ぎ、ずっとお茶を濁しながら生きてる。

これでは生きてる意味もない。

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「これは、とくにあなたにいっておきたいことなのです。安易な考えかたをしてはなりませんよ、ジョーン。手っとり早いから、苦痛を回避できるからといって、物事に皮相的な判断を加えるのは間違っています。人生は真剣に生きるためにあるので、いい加減なごまかしでお茶を濁してはいけないのです。なかんずく、自己満足に陥ってはなりません」

「春にして君を離れ」- アガサ・クリスティー –

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———— Because we forget that everything is transitory, and no one single instance can summarize the whole. There is nowhere to “arrive” to. The only thing you’re rushing toward is death.

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